ポメアディアン「ただいー」
雑な挨拶をして扉を開ける。
私、リトは週末になるとアディの家に遊びに来る。今日は金曜日の夕方。鍵は開いてたからアディは家にいるらしい。
「アディー?」
しかし、挨拶をすれば必ず返してくれるはずの大きな黒い影はいない。でも上着掛けにロングコートはあるし、机の上に赤い目を隠すサングラスも置いてある。
「寝てんのかな……」
夕方頃に寝てるの珍しいな、と思いつつ、けれどさして心配もせず、私は自分に宛てがわれた部屋のある3階へと階段に足をかけた。
「…………ん?」
なにやら、高い声が聞こえた気がした。
気のせいかと思うほど小さく細い声。しかしその音は階段を上る度大きくなって行った。音がかき消されないよう、そうっと足音を立てないよう気をつけて進む。
1072